あやとり


初雪が降る前に、私はアルバイトを辞めた。

今、もっと考えなくてはならないことがあるような気がしていた。

でも、それがよく見えてこないから、とりあえずあと四年、学生でいるほうが懸命に思えてきた。

親の言いなりになるのではなく、時間が欲しかった。

だから勉強することにした。

学校と家の往復が続く日々のなかで、あることに気付いた。

ひとつはどこに置いたか忘れてしまいそうになる携帯電話。

いっこうに鳴らない。

優ちゃんからも直哉からも連絡がないことだった。

いつも自分からあの二人にメールや電話をしていて、二人から私に連絡してくるということが少ないって言う現実を実感した。


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