あやとり
第四章
涙
北風が厳しくなってきた十二月の半ばに、母が子宮筋腫で入院することになった。
優ちゃんに連絡をするのは文化祭前に優ちゃんに謝らせてしまった時以来だった。
母の病室にやってきた優ちゃんは以前より痩せて疲れているように見えた。
それなのに悲壮感はない。
彼女は、私の知っている優ちゃんからどんどん遠ざかっている。
そのことが冷たい風が入り込んで背中を冷やすように寂しく感じた。
母は優ちゃんの顔を見ると、一瞬顔を綻ばせたものの、蟠りが残っているのかちゃんと目を合わせない。
「あなた、痩せたんじゃない?」
優ちゃんを一目見ただけで何かを感じ取ったのだろうか。
「幸せになれない相手とのお付き合いはやめなさいよ」
「もう三十だもの。自分のことは自分でわかっているよ。でも心配かけているならごめんなさい」
優ちゃんは微笑んでみせる。
母はそれでもまともに優ちゃんの顔を見ない。
「ほんとうなら、今頃幸せな新婚生活を送っていたはずなのにねぇ。人生ってわからないものね」
「不幸じゃないわよ、わたしは」
きっぱりと優ちゃんが言った。
母は小さなため息を吐いたあと、複雑な表情で微笑み「どうせ言ったって聞かないんだろうから」と呟いていた。