あやとり

終業式が終わった後、私は甲斐君にそっとメモを渡した。

〈話したいことがあるの。一緒に帰れる?〉

甲斐君は顔を上げ、私の顔を見ると首を縦に振った。



二人だけで帰り道を歩くのは初めてだった。

初めてで、これが最後になるんだ。

「結局、ユウにまだ言えてないんだ。俺って思ったよりなさけねぇの」

小石を蹴りながら甲斐君は苦笑いする。

「頭ではわかっているんだけれど、気持ちが傍に居たがっているってやつかな」

「本当は別れてなかったんだね」

「別れたとか付き合っているとか、そういう枠なんか、初めからないよ」

夕陽の光が斜め下に見える川の水面をきらきらと動いている。

そこに蹴っていた小石を拾い上げ、彼が投げる。

飾らずに自分の胸のうちを言葉にする彼の横顔と、夕陽を映す川とが一セットになって心に焼きつくように印象的だった。


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