あやとり
川沿いまで降りて甲斐君が座る。
その横に立ってぼんやりと川を眺める。
「俺だって、よくわかんないよ。だから先を見たいんだ。だから、動かなきゃ」
川の水も流れがある。
それに沿うのか、逆らうのか、この中に住むものたちも動き、変化しているのかな。
私は自分の力で動き出せるんだろうか。
「中原の話ってなに?」
甲斐君の声で、我に返る。
私も正直に伝えなきゃ。
「あ、あのね、甲斐君が東京に行くこと、もうとっくに優ちゃんに話しただろうと思い込んでて、話の流れでね、その話になってしまって。だから、優ちゃん、もう知っているよ」
「そっか」
意外にも彼はすんなりとその事実を受け止めたので、拍子抜けしてしまった。
「ご、めんね」
川の向こう岸を見つめたまま、彼は頷いた。
立ち上がってズボンのお尻を叩く。