あやとり
「妊娠してるんじゃないの?」
呟くように訊いていた。
まっすぐに私を見つめ、この場に私たちのほかに誰もいないことを確認するかのように、一度辺りを見回してから、また私の目をまっすぐに見る。
「絶対、誰にも言わないって、これだけは約束して」
私の両肩を掴み、彼女は今まで私に見せたことがないような、真剣で厳しささえも感じさせる顔で訴えてきた。
「う、うん」
すっと彼女の顔から厳しさが消え、微笑みに変わる。
「七月三日が予定日なの」
「そうなの?誰との子ども?」
「わたしの赤ちゃんだよ」
きっぱりと言い切った。
私が見惚れるくらいに幸せそうな笑みを浮かべている。
なんだかそれ以上は訊けなかった。
「えっと……おめでとうでいいのかなぁ」
「もちろんだよ。ありがとう。みぃちゃん」
私の横をすり抜けて手を洗いに行き、彼女は給湯室へと戻っていった。