あやとり


母の病室に行ってからも、頭の中が優ちゃんのお腹の中の子ことが気になって仕方なかった。

父親は誰なのだろう……。

七月に生まれるってことは、田村さんの子供って可能性は殆どないと言えるだろう。

だとしたら、その後での人……。

どうしても甲斐君の顔がちらつく。

まさか、そんなことないよ。

必死に別に該当しそうな人物を作り出す。

会社の上司とかかもしれない。

いや、違う。

会社変わったばかりだって言っていたから、その可能性は薄い。

それとも、前の会社の人と関係があったから転職したのだろうか。

「どうしたの?みぃちゃん、そんな難しい顔しちゃって」

母に問われて、慌てて思考を切り替える。

「ん、ちょっとね」

「ああ、そういえば、優ちゃん、みぃちゃんね、アルバイト辞めて受験勉強しているのよ。たまには見てやってね、勉強」

母は満足げに微笑んだ。


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