あやとり
「私、帰るね」
優ちゃんの横をすり抜け、私は玄関で、靴を履いた。
「待って、それならタクシーを」
「ううん、いいの。大通りに出ればひろえるから。優ちゃん、無理しないようにね」
そう言うのが精一杯で、玄関のドアを閉めた。
階段を駆け降りた後、上を見上げると優ちゃんが心配そうにこっちを見ている。
私は少し考えてから微笑むことにした。
優ちゃんは何も悪くない。
そのことはいつもわかっている。
優しくなりたかった。
でも、出来ない何かが心の中で渦を作って今も回っているから、素直に出来なかった。
今はただ、微笑むことしか出来なかった。