あやとり

「冷蔵庫にコーラがあるはずだから、飲んでいいよ」

「お、サンキュ」

甲斐君の声が小さくなっていったのを感じて、私は少し開いた窓からそっと、部屋の中を覗いてみた。

台所からまっすぐ先には、コタツに入り、背中をソファーの腰掛の部分に預けて座る優ちゃんの姿が見える。

そこへコーラを右手に持った甲斐君が歩いていく。

甲斐君は優ちゃんの頭を挟むような形でソファーに座った。

優ちゃんの頬に持ってきたコーラの缶を当てる。

「冷たいなぁ、もう」

優ちゃんが口を尖がらしている。

甲斐君は優ちゃんのその表情に満足げに笑い、缶を開けて、ゴクゴクッとコーラを飲むと、今度は優ちゃんの顔の前にそれを出し「飲む?」と声を掛けたように見えた。

優ちゃんは缶を持つと二、三口飲み、甲斐君の手に戻す。

彼はそれを飲み干し、コタツの上に置いた。


< 128 / 212 >

この作品をシェア

pagetop