あやとり

優ちゃんは気分があまり優れないのか、甲斐君の両足の間で相変わらず頭をソファーに載せている。

甲斐君が両手で優ちゃんの頬を撫で始めた。

胸の奥がキュウっと締め付けられて痛くなるのを止められない。

優ちゃんの顰めていた顔が徐々に和らぎ、安らいでいる表情になっていた。

甲斐君は愛おしそうに何度も彼女の頬を撫でている。

ショックだった。

優ちゃんにしても、甲斐君にしても、あんな表情をしているところを私は今まで見たことがない。

私が知っている優ちゃんはいつも大人で、しっかりしていて、親にも甘えることがなくて。

でも、今、目の当たりにした姉は、私と同じ歳の男の子にあんなにも安らいでいるのだ。

胸が痛かった。

私は何故ここに居合わせてしまったのだろう。

それと同時に(もういい)とも思った。

もうあの二人のことで私があれこれ考えるのはもうしないでいい。

そっとしておくのがいいんだ。


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