あやとり

ドアは開けられたままだった。

恐る恐る部屋の中を覗いてみる。

男は優ちゃんを窓の前まで追い詰めていた。

上半身全体で呼吸するかのように体が上下していて、ロープを持ったまま、優ちゃんに一歩一歩と近付いている。

「僕のことを覚えていますか？」

意外にも丁寧に訊いている。

その言葉に優ちゃんは眉を顰めた。

一生懸命何かを思い出そうとしている。

私は優ちゃんの姿を、玄関ドアを盾に見るのが精一杯で、中に入っていけなかった。

答えられない優ちゃんに、男はまた一歩近寄る。

「僕のことを覚えていますか？」