あやとり

振り返るとそこに甲斐君が立っている。

「あ……」

私の表情が、目の前の恐怖を語っていたのを彼は感じたのか、彼の視線は既に部屋の中にいる二人に向けられていた。

「なんだ、お前」

彼の目に、男が持つロープが映った瞬間、彼は手にぶら下げていたビニールの買い物袋の中から何かを取り出し、それを男に投げつけていた。

それは振り返った男の顔面に見事にぶち当たり、床に落ちてガコッと音を出し転がった。

アルミ缶だ。

男はその場で蹲り、両手で自分の顔を覆って、呻きながら痛がっている。


< 138 / 212 >

この作品をシェア

pagetop