あやとり
その台詞に甲斐君は納得がいかないといったようだ。
それは私も同じだった。
また、同じ目に合ったらどうするというのだろう。
その時も助けてくれる人がいるとは限らない。
甲斐君だって東京に行ってしまうというのに。
優ちゃんは男に向かって話し出す。
「あの頃は、本当にそう思っていたの。でも、考え方って、変わるものだわ」
男は瞼を閉じて、呟く。
「あ、頭では分かっているんです。ただ、頭に追いついていかない感情がある。警察に突き出してください」
優ちゃんにあんなことをしておきながらも、男は言葉を丁寧に遣う。
「ハルト、解いてあげて」
「嫌だ」
「ハルト、原因はもともとわたしにあることなんだから」
「なんだよ、それ。なおさら嫌だよ」
甲斐君は怒っているようではなく、懇願するように優ちゃんを見る。