あやとり
微笑み
川辺には私のほうが先に着いた。
三分ほどした頃、視線の先に甲斐君の姿が入ってきた。
ああ、甲斐君だ……。
今は私に会うために歩いてくれている甲斐君だ。
胸の奥の方が震えている。
どうしてだろう。
誰かに会うのにこういう感覚に陥るのは初めてかもしれない。
「悪いな、呼び出したりして」
「ううん。大丈夫」
「コーヒー、おごるよ。缶だけど」
彼は道路沿いに見えている自動販売機を指差して笑った。
その笑顔を見て、構えていた心がふわっと柔らかくなった。
「ほい」
「ありがとう」
手渡された缶コーヒーは、冷たくなっていた手を温めてくれた。
今なら、昨日のことを謝れる気がした。