あやとり

「知っても俺、結局何も出来なくて、ユウに言われるままにしているしかない……。昨日のだってさ、あの男があんなことしたのは、俺がユウより年下だったのが原因だろ」

「そうなの?」

甲斐君は苦笑しながら私を見た。

「大学時代のラブレター、いつも年下と付き合う気になれないって断り方をしていたって。ひでぇよな」

「あ…あ」

子供の頃、目にしていたあの手紙たちのことだ。

小学生の私が読んでいる姿が、蘇ってきた。

「なんで俺、もっと早く年取れねぇのかな」

そんなこと言わないでよ。

甲斐君が先に年取っちゃったら、私と同級生じゃなくなってしまう。


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