あやとり
直哉は私のお願いを仕事があるとき以外は断らないし、こうやって高校の正門前で待っていることも嫌がらない。
ただ、あまり自分のことを語ってくれない。
会社の名前とかも、訊いてみたことがあったが「車関係だよ」としか教えてくれなかった。
それを不満に思うこともあったが、教えてくれないのなら別にしつこく訊こうとは思わなかった。
そういうことを訊きたがるのは子供っぽいように思われる。
ただ彼と一緒にいることがいつしか他人に対して無言のままで出来る、私の自慢のようになっていった。