あやとり


父と母が病室に入ってくる。

母は既にひと泣きしてきた顔をしている。

父の表情はいつもに増して険しかった。

ただ、いつもとは違うものを感じる。

「お父さん、優ちゃん大丈夫なんでしょう?」

父は頷いている。

「傷は一ヶ月くらいで良くなるそうよ」

母が答えた。

「そう、よかった」

ほんとうに良かった。一気に気が緩みそうになった。

「雅、いったいどういうことなんだ?」

「わたしにもわからないよ。優ちゃんのアパートに行ったら、血の跡があって、玄関で優ちゃんが倒れていたんだもの」

あの光景がまた浮かんでくる。鳥肌が立つ思いだ。


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