あやとり
「気がついたら、警察の人が話を聞きたいと言っている。話せるか?」
父が優ちゃんに対して、最初に掛けた言葉の冷たさに、私は怒りさえ覚えた。
「お父さんは、ひどい」
父に向かってこんな強い言い方をしたのは初めてかもしれない。
父は何も言わず、病室を出て行ってしまった。
「違うのよ、雅」
母が私を制す。
「お父さんね、ショックと悲しみと、そして犯人への怒りで、気がおかしくなりそうなのを、必死で抑えているのよ」
優ちゃんは顔を病室の窓のほうに向けた。
「ごめんね、お母さん。お父さんにもごめんなさいって」
「伝えておくわ」
しばらくすると病室のドアがノックされた。
「はい」
ドアが開き、手帳を前に出した男の人が二人、病室に入ってきた。