あやとり


母がナースステーションで交渉してきた結果、今夜だけ特別に優ちゃんに付き添うことが許された。

「お母さん、私が優ちゃんに付き添いたい」

母は渋ったが、最終的には承諾してくれた。

きっともうすぐ、ここに甲斐君が来る。

今の優ちゃんには、甲斐君という薬が必要だろう。

ここに親が居ては薬を渡せない。

渡す……ちくりと痛むけれど、会わせてあげたいと思った。

それが出来るのは今、私のほかには誰も居ないのだから。


母が病室を出て行くと、優ちゃんは私の顔を見て苦笑いをした。

「みぃちゃんに付き添ってもらうことがあるなんてね」

「わたしも役に立つことあるでしょう」

「そうね、本当に。ねぇ、ブラインド、開けてもらっていい?」

「了解」


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