あやとり

窓辺に行って、ブラインドを上げると、夜空に月の姿がくっきりと浮かんでいた。

「明日は寒いのかなぁ」

「どうかな」

優ちゃんは目を細めるようにして夜空を眺めていた。

「……星になったと思うしかないわね」

自分に言い聞かせるように優ちゃんが呟く。

「最高に幸せな気分をくれて、最大の重荷であったわたしのたからもの……」

静かに震えるように私の耳に届いたその台詞は、今、まさに優ちゃんの顔に零れ落ちる雫の音色のようだった。

「トイレ、行ってくる」

病室を出て、こみ上げてくるものを廊下の天井を眺めることで抑えた。

< 178 / 212 >

この作品をシェア

pagetop