あやとり
窓辺に行って、ブラインドを上げると、夜空に月の姿がくっきりと浮かんでいた。
「明日は寒いのかなぁ」
「どうかな」
優ちゃんは目を細めるようにして夜空を眺めていた。
「……星になったと思うしかないわね」
自分に言い聞かせるように優ちゃんが呟く。
「最高に幸せな気分をくれて、最大の重荷であったわたしのたからもの……」
静かに震えるように私の耳に届いたその台詞は、今、まさに優ちゃんの顔に零れ落ちる雫の音色のようだった。
「トイレ、行ってくる」
病室を出て、こみ上げてくるものを廊下の天井を眺めることで抑えた。