あやとり
病室へ甲斐君を連れて戻る。
部屋に入ると優ちゃんがこちらを向こうと顔を動かした。
「遅いから心配しちゃっ……」
言いかけて、その瞳が甲斐君を捉えた。
「な、なんで居るの?」
甲斐君は先ほどまでとは違い、優しく微笑んでいた。
「私が呼んだの」
「俺がどうしても会いたくなっちゃって」
私の声に被さるように甲斐君が言った。
どっと優ちゃんの瞳が潤む。
大粒の涙が頬を濡らしていく。
私はそっと部屋を出た。
瞬間、廊下いても声が聞こえるほど、優ちゃんは泣いた。
あの優ちゃんが声を出して泣いていた。