あやとり

直哉は俯いて話を続けた。

「栗木さん、大学時代に何通も優さんに手紙を書いていたらしい。いつも、返事は〈嫌いじゃないけれど年下と付き合うつもりはない〉って。根がまじめでまっすぐな人だから、どうしても諦め切れなくて、季節が変わるごとにまた手紙を書くのだけれど、同じような返事がきて、泣く泣く諦めたって言っていた。それが、この年になって思い出されて、実際彼女と付き合っているのが高校生だと知って、自分でも抑えきれない感情が込み上げてきてしまったって、言っていたよ。それでも、先輩、後悔しているみたいなんだ。だから自首させたかった」

本当に直哉らしいと言葉だと思った。

あんなことをした栗木を先輩と呼ぶところも、自首させたかったという言葉も。


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