あやとり
十月に結婚式を控えていながら、優ちゃんが田村さんとの婚約破棄をしたことを両親に伝えにきたのは、私の通う高校が夏休みになった翌日のことだった。
今まで、両親の期待通りに生きてきた優ちゃんが初めて両親を困らせた。
既に親戚中に伝わっていた結婚を、自ら手放した優ちゃんの行動に、私も驚きっぱなしだった。
婚約破棄の理由をがんとして口にしなかった優ちゃんだったが、田村さんがお詫びに家までやってきて真相が明らかになった。
田村さんには妹のように可愛がっていた麻衣子さんという幼馴染がいた。
その麻衣子さんが田村さんの結婚を知ってから家出をしていたらしい。
置手紙には〈智ちゃんのお嫁さんになれないのなら、生きている意味がない〉と書かれていたそうだ。
結局、麻衣子さんは数日後、田村さんと優ちゃんの新居となるマンションの前で、行ったり来たりしているところを優ちゃんに見つけられた。