あやとり

「だとしても、こんな酷いことをするなんて」

「それほど、彼は傷付き、自分の想いに追い詰められていたってことだもの。わたしがもっと思いやりを持った人間であれば、こんなことは起こらなかった」

優ちゃんは辛そうに瞼を閉じる。

確かに彼女の言うことは間違っていないかもしれない。

全然非がないはずだと許される立場の被害者であっても、加害者側の心情を聞くと、きっかけを作っているのは被害者側であるというこの現実が、こういった事件の悲しいところかもしれない。

どういう片想いなら認められて、どこからは罪なのか。

ただ、スタートは優ちゃんのことが大好きだという感情だったのだろう。

だからと言って、栗木を許す気には到底なれないけれど。

彼は彼で、報われない辛い恋心を捨て切れず、最後まで救われなかったのだ。
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