あやとり
干渉
直哉の車に乗って、数分後に携帯電話が鳴った。
液晶画面には『家』の文字が表示されている。
小さくため息を吐いて、出ようか出まいか迷っていたら、どこからの電話か予想がついたのか、直哉が笑った。
「出てあげなよ」
「でも、今日は中華が食べたかったのに」
「急用かもしれないし、ね」
仕方なく、通話のボタンを押し、耳に当てる。
「みぃちゃん、学校終わったのでしょう?今どこ?出先だから迎えに行くわよ」
「いいよぉ」
「あら、今日はバイトもないはずでしょう」
「これから直哉と一緒にご飯食べに行くから、直哉に送っていってもらう」
言いたくなかったが、いつも直哉が「嘘ついてばれたら、俺が行き辛くなるから」と言うので、ネットゲームでのことを除いては、直哉の前で母に嘘を吐かないようにしている。
「直哉さんと一緒なら、うちで一緒に夕食にしましょうよ。母さん、腕をふるってご馳走作るわ」
予想通りの台詞が返ってきた。
これが嫌なのだ。
母のハイテンションな声が携帯電話から直哉にも聴こえていたらしく、直哉はクスッと笑った。
私は口を尖らせて直哉に(ほら、中華食べられなくなったじゃん)と目で訴えた。