あやとり
「なぁ、もう少し頑張ってR大の文系辺りを目標としてみたらどうだ?」
父の言葉は、天気予報が晴れから雪へと外れてしまったように予想外のことだった。
R大は優ちゃんが通った大学だった。
経済学部にストレートで合格し、きっちりと四年で卒業した。
それは優秀な優ちゃんだからこそ出来たことだと、近所からも親戚からも羨ましがられていた。
「わたしには無理だよ」
がっかりさせたくないけれど、今更、滑るのを知っていながら受験に向かって必死になるのはごめんだった。
私は優ちゃんではないのだ。
この頭ではR大にストレートで入れるわけがない。
「まだ二年生なんだから、これから頑張れば行ける筈だ。アルバイトを辞めて勉強に専念すればいい」
父の横で黙って話を聞いていた母が思いついたように顔を上げる。
「そうだわ、直哉さんに家庭教師を頼むのもいいかもね。みぃちゃんが勉強に集中出来るように、ね」
この変わりようは一体何だというのだろう。
高校受験のときは、こんな風に親の意見のなど言ってこなかったのに。