あやとり
優ちゃんが卒業した高校と、私が今通う高校はレベルが違う。
優ちゃんが通ったのは地元で一番の進学校だった。
私の通う高校とは校風も生徒たちの顔つきも違うところだった。
私もその進学校を目指した時期があったが、小学校時代の十数回に渡る入院生活で出た学力の遅れは、私の嘲笑うかのように点数に現れた。
高校でさえ、それだけの差があったのだ。
私の学力を十分に知っているはずの両親が、何を血迷ってR大の名前を口にするのか。
「直哉さんだって仕事があるのに、そんなの無理だよ。わたしは短大でいいよ」
「何の努力もしないうちに諦めるようなことを言うものじゃない。まだ一年あるのだから、高い目標を持って、頑張ってみなさい。とにかく、アルバイトをする必要は特にないはずだ。今月中にもちゃんと辞めてくるように」
父はそう言い切ると「風呂に入る」と言ってリビングから出て行った。
「お小遣いが足りないなら相談にのるから、アルバイトはちゃんと辞めなさいね」
今度は母が念を押した。