あやとり
「なんでさ、辞めちゃったの?結婚。あの幼馴染に捕られちゃったわけ?」
優ちゃんは苦笑いをしながら、食器棚からマグカップを二個取り出した。
「みぃちゃん、紅茶は砂糖だけだったよね?」
「うん」
ティーポットに紅茶を入れ、お湯を注ぎながら、優ちゃんはまたひとつ、苦笑いをした。
「なんていうのかな、目の当たりにして凄いなぁって思っちゃったのよ」
優ちゃんは時々、今みたいな言い方をする。
どう感じたかが先で、誰がとか、何をどうしたかと言うことがないままで話し始めるから、イライラしてしまうことがある。
そして、ふと冷静になると、こんな小さなことでイライラしてしまうところが自分で嫌になる。
まるっきり他人に対してなら顔に出したりしないのだが、なぜか優ちゃんに対しては顔に出てしまうのだ。