あやとり
こんな私のもうひとりの犠牲者は他ならぬ直哉だ。
彼の前でも感情が顔に出ていると実感している。
それでも喉もと過ぎると直哉に対しては申し訳ないなぁと思えるのだが、優ちゃんに対しては腹立たしさが納まらない。
本人の口から出た言葉ではないのだが、いつも優ちゃんが心の中で(みぃちゃんは子供だから)と馬鹿にしているような気がしてしまっているから、余計にイライラするのだ。
「優ちゃんのほうが綺麗だし、五年も付き合っていたんでしょう。おかしいよ」
優ちゃんはまた苦笑いをして見せた。
「そういうことじゃなくてね。自分の全てを掛けてでも、譲れない想いっていうか、情熱みたいなものをね……。まぁ、結局いちばんの原因はわたしにあるのよ。それで、彼は納得してくれた。それだけよ」
線を引かれたような気がした。
ここからは大人の事情だから、この話はもうお仕舞いよ。
優ちゃんの大きな瞳がそういう光を放っていた。
「まぁ、どうでもいいや。終わったことだものね。それより、優ちゃん、家に来てお父さんたちを説得してよ。わたしの希望する学校に行かせるよう言ってやってね」
「しょうがないなぁ」
ため息を吐きながらマグカップの一方を差し出す。
きっと優ちゃんは近いうちに家に顔を出してくれるだろう。
優ちゃんだけは私頼みを絶対に断らないこと、私が一番良く知ってもの。