あやとり
いつもなら、そんなに気を急かさなくても、千春のほうから話を出してくる。
そう、うまくいっていれば話し出すはずだからと、心待ちにしていると、亜紀と由美の二人が教室へ入ってきた。
それに気付き、千春がそちらに向かっていってしまった。
これで今日の午前中の授業は落ち着きのないまま、私の身にならずに終わってしまうだろう。
気になることはどんなことをしても頭から離れないものだ。
結局、千春から話が聞けたのは、お昼休みになってからだった。
教室では話し辛いのか、千春は私を屋上へ誘った。
お弁当を持って二人で屋上へ続く階段を上っていくと、上から甲斐君と村井君が走り降りてきた。
「土曜日はありがとうね」
千春が声を掛けると甲斐君は「おう」と、右手を上げてそのまま下へと駆け下りて行った。
「なんだか、親しくなれたみたいだね」
「うーん、親しくっていうか……」
千春が言葉を濁す。