あやとり
「まぁ、来てはくれたんだけれどね。甲斐君は男同士で行くもんだとばかり思っていたみたいで。わたしたちの顔見るなり、『なんで、いんの?』って」
「へえ、そうだったんだ」
「でも、まぁ、ほかの人たちの計らいで、乗り物とかは甲斐君の隣に乗れたんだけれどね、きっと、意識してくれてないね、彼は」
千春は、お弁当を箸で突きはするが、あまり口へと運んでいなかった。
「ねぇ、普通さぁ、女の子と一緒だったら、観覧車とか乗ったとき、ある程度は意識するよね?」
観覧車に乗ったんだ……。
「うーん、まぁ、二人きりになったりすると、意識しちゃうよね」
「でしょう?でもさぁ、甲斐君って観覧車から外ばっかり眺めて、喋らないし、こっち見てくれないし。わたしの話にも反応薄かったし。なんか、悲しくなってきちゃったよ。この人、わたしに全然興味ないんだなぁって」
千春の話を聞きながら、昨日の母の話しを思い出していた。
もし、甲斐君と優ちゃんが付き合っているとしたら?
でも、それって、絶対上手くいくわけない。
優ちゃんと十三歳も歳の差があるのだもの。
あの両親が絶対に許すはずない。
たとえ一時的に付き合っていたとしたって、将来的なものなんてあり得ない。
それなら、いずれ別れることが決まっているなら……。
そして私はあることを思い付く。