あやとり


今日の授業終了時に、私と千春は二日間念入りに計画したことを実行することにした。

カバンを肩に乗せるように持ち上げた甲斐君の前に立ち、とりあえず微笑んでみせる。
 
甲斐君は少し驚いたように後退りする。

「なに?」

「今日さ、わたしたちと一緒に行って欲しいところがあるんだけれど」

「わたしたち?」

「うん」

後ろに居る千春の方に振り返り、「一緒にね」と千春に同意を求めると、千春も「うん。一緒に」と答えた。

計画通りに行くだろうか。

「うーん、どこに?」

甲斐君はちょっと困った表情で訊いてきた。

「わたしのお姉ちゃんのとこ」

「え?」

「中原優って、甲斐君知っているでしょう?」

「それって、え、姉妹なの?」

甲斐君は本当に驚いているようだ。

「わたしも中原、もしかして知らなかった?」

「初めて知った。ユウの妹なんだ…。へえ、似てないね」

「みんなに似てないねって言われてます」

甲斐君はごく自然に優ちゃんを『ユウ』と呼んでいた。

この呼び方を耳にして、背後にいる千春も昨日の私の推測がまんざらでもないと思っただろう。
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