あやとり


大部屋での入院生活は、人の言動からその心を窺おうとする癖を私に植え付けた。

そうしながら、当たり障りなく、入院生活を過ごすのが賢いと子供心に思っていた。

今回の計画はそれを逆からしなくてはならない。

相手の心を自分の言動で動かし、それを行動にも持っていかせるのだ。

難しいと思いながらも、私はいつも優ちゃんに対してそれをやってきたことに気付いた。

知っているのかいないのか、優ちゃんはいつも私のわがままを聞いてくれていたのだから、同じように甲斐君にも私の話に乗ってもらえればいいのだ。

甲斐君は納得いかない表情のまま、何かを考えていたが、顔を上げて私たちを見た。

「わかったよ」

(第一段階突破!)

「じゃあ、早く行こう」

私と千春で甲斐君を挟むようにして、三人で教室から出た。


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