あやとり
「どなたですか?」
さすが女の一人暮らしを五年もしていると、相手を確認する前にドアを開けたりしないんだなぁ。
変なところに感心しながらも、ドアを開けた瞬間に驚く優ちゃんの顔が見られないじゃないかと、不満にも思いながら「雅」と名乗った。
「みぃちゃん?」
ドアを開けた優ちゃんの顔は十分に驚いた顔をしていたので、とりあえず第一段階の満足感を味わうことができた。
「え?どうしたの?今日、来るって言ってなかったよね?」
「同じクラスのコが、優ちゃんとこに行くって聞いたから、一緒に遊びに来ちゃった。はい、これ、お土産」
ケーキの箱を手渡し、階段の下に居る二人を呼ぶ。
「もう帰ってきてるよ」
声に反応して、千春が階段を昇り始め、その後ろから甲斐君が上がってきた。
「千春です。いつも雅からお姉さんの話を聞いていました。お邪魔します」
昨日の計画通りの台詞を千春が言った。
「あ、優です。こんにちは」
いつも取り乱さない優ちゃんにしては、声のトーンがぎこちなく、上下しているように感じた。
「知っていたなら、教えてくれればよかったのにな。妹が俺の同級生だって」
甲斐君はちょっと不服そうに優ちゃんに言った。