あやとり
目を見開きながら、優ちゃんは視線をこちらに向ける。
「ねぇ、甲斐君に話したらびっくりしてたよ。てっきり知っていると思っていたのに」
「あ……、そうだね。話しておけばよかったわ。ごめん、ごめん」
「ケーキ、食べようよ。姉さんにはブルーベリーチーズケーキを買ってきたよ。甲斐君が選んだの」
困惑した瞳で、甲斐君のほうを見る優ちゃんの視線に甲斐君が気付く。
「あ、姉さん、コーヒー入れるの、わたし手伝うね」
優ちゃんの手を引っ張り、二人でキッチンのほうに行く。
今ここで、甲斐君に私と千春の計画に気付かれてしまうわけにはいかない。
沸騰ポットに水を入れ、再沸騰ボタンを押すと、ポットから音がし始める。
「わたし、これから『姉さん』って呼ぶことにするね」
「どうしたの?急に」
「だから、姉さんもこれからはわたしのこと、『雅』って呼んで。もう、『みぃちゃん』て、呼ぶのはやめてね」
コーヒーカップを出そうとしていた手を止め、優ちゃんは私の顔を見つめた。