あやとり

優ちゃんの部屋で、千春と私は学校でのことを話しては笑ったり、文句を言ったりして、優ちゃんがそれを聞きながら笑っていた。

甲斐君に視線をやると、彼は途中から優ちゃんの部屋の本棚にある本を取り出し、読み始まってしまっていた。

甲斐君が本を選び、読み始める仕草はまるで自分の部屋でそうする姿のように何の違和感もなくこの部屋の雰囲気に溶け込んでいた。

それを感じたのは私だけではなかった。

「甲斐君て、ここに何度も来たことある感じだね」

「まぁね」

甲斐君のそっけない返事に場が静まる。

「あ、わたしね、彼の家庭教師も引き受けていたことがあってね。時々この部屋でも教えていたりしたから」

優ちゃんはさらっと言ってのけたが、取ってつけたような話に、その場に居るみんなが眉をしかめる。


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