あやとり

「ち、千春がさ、訊いてほしいって」

千春には悪いけれど、また利用させてもらうことにした。

甲斐君はカバンにお弁当箱を突っ込み、立ち上がる。

「ユウから聞いてんだったら、俺に聞くまでもないでしょ」

納得いかないようにまた、顔を覗き込む。

「なに?」

「俺のこと、ユウに聞いたみたいに言ってたけど、本当にユウが話したの?」

「なんでそんなこと訊くの?」

甲斐君の顔が近くなっただけで、妙な動悸がしてくる。

「よく考えたら、それってありえねー気がしてさ」

「どういうこと?」

「ユウの性格考えると、な」

そう言い残し、私の横を通り教室を出て行こうとする甲斐くんの後姿を眺める。

まるで、甲斐君の方が優ちゃんを知っているみたいな言い方だ。

そのことが癇に障る。

胸の奥からこみ上げて来るもやもやしたものに、私は飲み込まれそうになっていった。
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