あやとり
「まぁ、でもよかったじゃん。見つかって。今日はアルバイトだって言ってきているから、家からは電話は来ないはずだよ」
直哉の車の助手席で自分の携帯電話を見せながらそう伝えると、直哉は苦笑いしていた。
「悪いやつだなぁ」
「アルバイトを口実に出来るのも、もうこれで最後になるかも」
「辞めるの?」
「お父さんが、受験に専念しなさいって」
「そっか」
直哉はハンドルを右に回しながら頷いている。
「じゃあ、こうして会うのも少し控えた方がいいのかな」
「お母さんは直哉に家庭教師を頼めばいいって」
「マジで?」
直哉が笑う。
「お父さんにしてみればいちばん嫌な家庭教師じゃないか?」
「どうかな」
「どこの大学を受けるつもり?」