あやとり
誰にされても、嫌な質問だ。
「お父さんはR大にしろ、って。絶対無理」
「R大かぁ。そう言えばこないだ会社の先輩の栗木さんとさ、飲みに行ったんだけれど、栗木さんもR大の出身で、大学の話になってさ。中原優さんって名前が出てきて。雅のお姉さんのことだってね」
「どんな話?」
なんとなく内容が見えてくる気がしたけれど、一応聞いてみた。
「ファンクラブみたいなのが、あったらしいよ。さすがだよな」
「へえ。ねぇ、今日は石焼ビビンバ食べたい」
話題を変えたかった。
直哉のなかでは私がいちばんであって欲しい。
直哉といるときまで優ちゃんへのコンプレックスを感じたくはなかった。
「石焼ビビンバだったら、『大楽園』がいいかなぁ?」
「うん、そこにしよう」
「OK。で、栗木さんも優さんのファンクラブに入っていたんだって。〈アシェラ〉とか呼んじゃってさ。あの崇拝振りは正直、少し引いたよ」