あやとり

送られてきたメールの中でいちばん私を眠らせなかったのは、優ちゃんと甲斐君が本当に付き合っていたということだった。

〈別れた〉という言い方をするということは、〈付き合っていた〉という事実があるときだけのはずだ。

 何度も寝返りを打つ。

眠れそうで眠れない。

甲斐君が優ちゃんの鼻を摘んだシーンと、彼が優ちゃんのケーキを選んだシーンが蘇ってきた後に、どうしてもあの二人が二人きりでいる光景を想像してしまう。

優ちゃんはもう三十の大人の女だ。

十七歳の甲斐君とどんな付き合いをするというのだろう。

私が知る優ちゃんと、甲斐君が知る優ちゃん……。

嫌だ、なんだか分からないけれど嫌な感じだ。

枕に顔を埋めて、自分が想像してしまう彼らの時間を消し去ろうとした。


< 82 / 212 >

この作品をシェア

pagetop