あやとり
第二章
直哉
学校の正門から十メートルほど、離れたところに車を停めさせて彼を待たせている……同級生たちに自慢したいほどの社会人の彼を持つ女子のほとんどが、一度はやってみたことがあるだろう。
正門を出て、大きな桜の木の枝が秋風に揺らされている下を友達とともに渡る。
横目で車が着ていることを確認して、話に夢中な友達に済まなそうな表情を見せ、足を止める。
「ごめーん。迎えがきているから」
千春の視線が私の視線の先に向く。
「あ、今日はデート?いいなぁ。わたしも年上の人と付き合いたぁい」
千春の声とともに前を歩く数人の視線も、停めてあるパールホワイトの車体のほうへ向く。