あやとり
校庭にはたくさん人が集まっていた。
ほとんどが誰かと共に歩いている。
私は千春が居なければ、行動を共にする友だちが居ないことを実感する。
終夜祭に出るつもりもなかった。
甲斐君と村井君の少し後ろを歩き、校庭のほうに出ると、私は二人の背中に声を掛けた。
「わたし、帰るんで。今日はお疲れ」
「おう。お疲れさま」
村井君がそう言って、その横で甲斐君が右手を上げて振った。
彼らの背中越しに見えた終夜祭の光景。
嬉しそうだったり、緊張し合っていたり、はにかんでいたりする高校生たち。
同じ高校生だけれど、私には縁のないもののように感じてしまった。
いつの頃だったのだろう。
同級生たちに自ら距離を作ってしまったのは。
自分に問いながら、私は歩き出した。