ボディガードの彼
「杏奈だったのか。これは、すまなかった」


ロイだ。――…


あたしは、ロイの馬鹿力に抱きすくめられたまま、身動きできなかった。


ロイは、すぐにその手をゆるめ、銃を下ろして、部屋の明かりをつけた。
そこには、あたしの知っているロイの姿があった。


「ロイ。ケホッ。勝手に入って、ごめん…なさケホッ」

「悪かったのはこっちだよ。杏奈だということが、すぐにわからなかったのだから」


ロイは、あたしの背中を優しくさすってくれた。


「私は、怪しい物音には、すぐに対応するようにできているんだ」

「そうだよね。あたしも、そのくらい気がつけばよかった」

「これからは気をつける。杏奈の気配をより、すばやく感じ取れるように」

「ありがと」

「それよりも、杏奈。どうしたの? 眠れないの?」


ロイの優しいグレイの瞳が、あたしを見下ろす。
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