今宵は天使と輪舞曲を。
片ややり手の実業家としても名を馳せる伯爵家と財産も残り僅かとなった没落貴族の自分。彼らとの雲泥の差がありすぎる。
これではメレディスが側にいるだけでスキャンダルになること間違いなしだ。
まさか!
メレディスははっとした。
もしかすると、彼はそれこそが狙いなのかもしれない。
レディー・ブラフマンの様子から察するに、彼女はなかなか身を固めようとしない息子ふたりの結婚相手を探すのに必死になっているようだ。もし、ラファエルが彼女の行動に対して嫌気を差しているとすれば――。母親からの花嫁探しを諦めさせようと計画している可能性が高い。
ラファエルが没落貴族のメレディスと逢瀬を繰り返し、スキャンダルになることで母親への意趣返しを企んでいるのだとすれば、すべて合点がいく。
ああ、なんてことかしら。
彼はルイス・ピッチャーと同じことをしようとしている。
彼はわたしを利用しようとしているんだわ!!
《甘やかな口づけ・完》