今宵は天使と輪舞曲を。
メレディスを監督する女主人であるエミリア・デボネは、床から顔を上げて愛娘のジョーンを視界に入れた。
「なんですか、ジョーン。年頃の娘が大声だなんてはしたない。……これは、まあ!!」
いつものようにジョーンを咎める彼女だが、その反応はジョーンよりもずっと大袈裟のように思えた。彼女は今や目を見開き、手紙とジョーンを交互に見比べている。
どうせジョーンの外見に魅せられたどこぞの男性が寄越した手紙だろう。これもいつもの日常だ。
しかしエミリアの次の言葉に流石のメレディスも手を止めざるを得なかった。
それというのも、ジョーンが手にしていた手紙の差出人はメレディスが予測すらしなかった相手だったからだ。
「これはブラフマン伯爵家からの招待状!?」
「ええ、そうよお母さま。手紙にはブラフマン邸に一ヶ月の滞在を誘われているわ! わたしたち、とうとう見初められたのね!」
「まあまあ、なんてことでしょう!」
「でもね、この手紙には娘さん三人って書いてあるのよね」
まあ! なんてことかしら。
わたしはメレディス・トスカとしてデボネ家で一生、身を粉にして働く運命を受け入れた。それなのに、神様はどうしてわたしを放っておいてくれないの?
ジョーン以上に驚いたのはメレディスだ。まさか自分もブラフマン家に招待されるとは思いもしなかったのだ。