今宵は天使と輪舞曲を。

 それはそうだ。ブラフマン邸に滞在するとなれば、社交界に参加する必要はない。したがってヘルミナは必然的に彼と会えなくなってしまう。
 ヘルミナにとって、彼は生まれて初めて彼女の体型を認めた紳士だ。彼女にとって彼という存在はかけがえのない相手だろうことには違いない。

 ヘルミナはブラフマン家からの招待を拒む理由こそ違うが、メレディス同様、ブラフマン邸に滞在なんて望んではいない。けれども伯爵家当主直々の招待ともなれば誰にも拒むことはできない。
 それに二人は乗り気な叔母と従姉に逆らえない。

 しかし物は考えようだ。ブラフマン邸には彼女、キャロライン・ブラフマンがいる。

 メレディスはキャロラインが好きだった。初めて出会った時から彼女とは馬が合うと感じたのも事実だ。彼女はとても頭が良く、機転が利く。優しくてユーモアのある女性だということも話してみて分かった。今まで見てきたどの女性よりもずっと可憐で、特に、他人の悪口を一切口にしないところが気に入っている。

 ブラフマン邸に向かうのは億劫だが、キャロラインとより親しくなるのはとても素敵な考えのように思える。

 ラファエルとは顔を合わせても話さなければいいだけ。彼には無視を決め込んでいればいいだけのこと。スキャンダルなんて時間を持て余している暇な貴族が面白可笑しく過ごすための娯楽だ。二人の間に発展がなければ話題に飽きて風化する。ラファエルとの話題がいつまでも永遠に続くわけがないのだ。


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