今宵は天使と輪舞曲を。
この先、歩いた後に広がる光景はもう知っている。
そこは以前、社交界の会場だった大広間だ。頭上には間隔をもって配置され、互いに散りばめられている小さなガラスのつぶてによって虹色に輝くシャンデリア。燃えるようなカーマインレッドの分厚い絨毯は当初のままだ。――そしてあの時、メレディスは中二階にいるブラフマン家の人間を見たのだ。ブラフマン家の人々はみな神々しい光を宿し、自信に満ちていた。彼らは雲の上のような人だと思えた。自分にはけっして縁のない人たち。だからまさか二度にも渡ってこの場所に来るとは思いもしなかった。
そして彼と出会ったのだ。
静けさと凛々しさの両方を併せ持った男性、ラファエル・ブラフマン。
彼を初めて目にした時、メレディスは彼に釘付けになった。彼がいない今でも当初を思い出すだけで胸が高鳴る。
薄い唇に塞がれた時、彼の吐息を感じて、両親を失い、しばらく実感することのなかった生の喜びを思い出した。分厚い胸板に身を委ね、彼の力強い腕に包み込まれた時を思い出せば、今でもみぞおちの部分が熱を帯びる。けれども自分はけっして彼に会いに来たわけではない。
彼とは深く関わらないと決めたではないか。メレディスは自分に言い聞かせ、思わず力強い腕を求めてうめきそうになった唇を引き結んだ。
意図に反してメレディスの思考がラファエルにばかり傾いている。おかげでメイドの説明もろくに聞いていなかった。メレディスは、彼女に呼びかけられてはっとした。