今宵は天使と輪舞曲を。
§ 03***デボネ家の日常。
エミリア・デボネは細い肩を怒らせ、頬を上気させていた。
真珠のように美しい肌は、今となっては赤いまだら模様に変化している。
金色の髪をふんわりと緩く巻いて後れ毛がうなじに垂れている。たとえ彼女がどんなに整った顔をしていたとしても、今の状況下ではかえって醜悪さが増す。
細い眉に高い鼻梁、鋭い顎。本来ならば透き通った青の目は怒り含んで闇色に変化し、品のある美しい顔は崩れ、鬼の形相だった。
それにしても彼女はいったいどうしてこれほどまで他人を侮辱できるのだろうか。
メレディスは唇を引き結び、頭上から浴びせかけられる醜い言葉の数々をただひたすら耐えていた。
彼女の怒りっぽさはメレディスがこの屋敷にやって来た当時から変わらない。
――いや、二年前に夫を亡くしてからはより酷くなった気がする。
たしかにここへ来たばかりの当初は彼女の夫がまだ元気だったおかげで、メレディスはここまで蔑まれずにすんでいた。
エミリアの夫の仕事っぷりはとても優秀で、金銭的に困ることもなかった。けれども彼は仕事にかまけていたばかりだったから、家庭には関与しようとは思わなかった。
だから彼女は相手をしてくれない夫への寂しさをこの屋敷で唯一他人である目下のメレディスにぶつけることにしていたのだ。そしてそれを見ている娘二人も彼女の真似をするようになった。