今宵は天使と輪舞曲を。
それというのも、どんなにラファエルの計画がひどく悲しいものでもメレディスの方からつれない態度をとったのには変わりない。そんな中で彼とどんなふうに顔を合わせればいいのかメレディスには分からなかったからだ。
「ミス・トスカ、屋敷の居心地はいかがですか? 行き渡らない箇所がありましたらメイドのベスに申しつけなさいね」
怒りを露わにする叔母たちを咳で制し、レニアは口を開いた。
「それには及びません。とても良い雰囲気のお屋敷ですわ。ね、ふたりとも」
レディー・レニア・ブラフマンの問いに答えたのはメレディスではなく、叔母のエミリアだった。レニアは半円を描く形のよい眉はひくつかせ、明らかに不快感をあらわにしている。しかしエミリア・デボネは自分中心に世界が回っていると思い込んでいた。レニアににっこりと微笑んでいる。ブラフマン家に招かれてから初めてレニアと会話したというのに、愚かにも彼女は旧知の仲であるかのように振る舞っていた。
「ところで――」
エミリアは話を続けた。
「ご子息お二人はご一緒ではありませんの?」
お目当てはブラフマン家の跡継ぎである息子二人であると、あからさまな態度を見せるエミリアに、レニアもまた彼女に習った。不愉快そうに眉間に深い皺を寄せている。
沈黙が苦しい。息が詰まりそうなほどの空間の中でも、エミリアとジョーンは自分が正しいことを証明しているかのように背筋を伸ばし、顔には偽りの微笑を貼り付けていた。
「いいえ、グランはいずれブラフマン家の事業を継いでもらいますから、今は主人の仕事の半分を担っておりますの。商談のため、三週間は戻らないでしょうね」
長男のこれからの行く末を知らされたエミリアの表情からはうっすらと笑みが広がっている。長女のジョーンと結婚させようと意気込んでいるのは見え見えだ。
「それから――」と、レニアは早口で続けた。