今宵は天使と輪舞曲を。
メレディスはデボネ家へ厄介になってからという四年間、彼女たちの前では常にのろまであり続けた。メイドたちは厄介事は御免だと自分から目を逸らす。
いじめを受けた当初は他の貴族たちにも助けを求めた。けれども彼女の外面だけは完璧だった。
おかげで恩を仇で返した子供として周囲からは嘘つき呼ばわりさえ受ける始末だ。
両親を一度に失い、ただでさえふさぎ込んでいる状態なのに親戚からはこの仕打ち。
孤独な日々を思って胸を痛め、ひとりになった夜はいつも涙を流していた。けれどもいったいいつからだろう、過酷な日々に涙は涸れてしまったし、今ではもう自分の人生をすっかり諦めてしまっている。
メレディスはこの四年間、連続して叔母たちのいじめから耐える日々を送っていた。
いくらなんでも毎日毎日使用人のように扱き使われ、いい加減もううんざりだ。それでもメレディスには頼る人すらおらず、この家で厄介になるしか術がない。どこかで餓死するよりもまだましだった。
「お母さま!」
永遠に続くかと思われたエミリア・デボネの罵りは、けれどもこちらへ近づいてくる忙しない足音によって中断された。足音の人物は知っている。
来月で二十二歳になる長女のジョーンだ。
彼女はとても興奮している様子だった。
頬を赤らめ、華奢な肩を上下に揺らしている。ふくよかな胸の膨らみとすらりとした背の高い彼女はまるでエミリアの映し鏡のようだった。