今宵は天使と輪舞曲を。
金色の髪も青い目も、高い鼻梁にふっくらとした小振りな唇。鋭い顎といった外見ばかりか、性格までもが母親の遺伝をそのまま受け継いでいた。
とはいえ、貴族たちの間では彼女の性格を知らない。彼女の上っ面ばかりしか見ない男たちは皆、ジョーンに愛の詩を送ったりダンスに誘ったりと懸命に彼女の気を惹こうとしていた。
「何ですか騒々しい。年頃の娘が大声なんてはしたない!」
「でもお母さま! 大変なの」
癇癪を起こしているエミリアに、彼女は紅い封蝋の印が施されている一通の手紙を手渡した。
彼女は裏に記されている差出人の名を見るなり青い目を見開いた。鼻息荒く、ひどく興奮した様子で震える手で封を破り、中を開く。引き結ばれていた唇は解かれ、読み進めると少しずつ笑みがこぼれはじめた。
きっと今回もどこかの愚かな紳士がジョーンを想った愛の詩を送りつけてきたのかとメレディスは思ったのだが、しかしエミリアの反応がいつもとは異なっている。どうやらメレディスが予想していたものとは違ったらしい。
「やったじゃない! でかしたわ、ジョーン。貴方たちは三週間後に開かれるブラフマン伯爵家のパーティーに参加するのよ!」
エミリアは喜々とした声を上げて喜んでいた。
「じゃあ、じゃあじゃあ。きっとご兄弟もいらっしゃるのね!」
ジョーンは母親の手から手紙を抜き取ると胸の前に引き寄せ、目を瞑っている。長い睫毛が斜を作り、彼女の顔を幻想的に作りだす。